1. 基本姿勢
人工知能(Artificial Intelligence、以下AI)は今後インフラ的に浸透していく技術であり、その活用方法自体が大学院での研究テーマとなりえます。またAIは創造性や知性の概念そのものについても再考を促す材料を提供していて、たとえば個人の主体性やオリジナリティを評価するという価値観が決して自明のことではなかったことも思い出させてくれます。
しかし、AIの利用が制作・研究のさまざまな新たな情況を生み出す一方で、高等教育機関としての大学では、やはり個人の獲得した能力を個人に帰属する限りで評価しなくてはなりません。大学は近代市民社会における個人という単位の尊重を前提としているからです。そのため、本学大学院で制作・研究・教育に携わる構成員は、この技術を注意深く扱い、みずからの能力伸長に資すべく、その価値を正当なしかたで引き出しましょう。
本ガイドラインの細目については暫定的な運用方針としますが、本学大学院でのAIの使用において変わること無く重要なのは、制作および研究における主体と責任の所在を明確にすることです。作品や研究の構想・選択・編集・最終判断は、常に学生本人に帰属します。AIは補助や拡張の手段であり、主体ではありません。論文執筆や作品制作、また成果プレゼンテーションにおいてAIを用いる場合には、そのプロセスやその位置づけを自ら開示することを重視します。
2. 具体的な利用ルール
2-1. 利用可(明示不要)
- 文章校正:日本語・外国語を問わず、誤字脱字、スペルミス、文法のチェックに利用可。
- 資料検索のサポート:典拠となる資料の候補を探すために利用可。ただし、AIが示した資料は必ず自分で内容を確認し、信頼性を評価してください。
情報蒐集のための翻訳:資料調査など情報蒐集時に翻訳ツールを使用することは制限しません。ただし、論文・レポートに引用文として使用した場合は必ずレポートまたは論文内でその旨明記したうえで自分の責任で用いてください。
- 素材作成:AIで生成した文章や画像をアイデアの参考にすることは可。ただし、そのまま自分の作品として提出することは禁止。必ず自分で内容を確認・加工し、信頼性、正確性、オリジナリティを担保すること。文章の生成をAIに委ねた場合であっても、その内容に対する責任は学生本人が負います。
2-2. 利用可(明示必須)
- レポート・作品の構成要素としての利用:AIが生成した画像、音声、文章などをレポートや作品の一部として利用する場合、以下を明示してください。
- 使用したAIの種類(画像生成/文章生成/音声生成等)
- 使用範囲(背景生成、構成補助、全体生成など)
- 制作・研究プロセスにおける位置づけ(補助/共同生成/主出力)
- 翻訳:自分が理解できない言語をDeepL等のツールを用いて翻訳して論文・レポートに引用文として使用することは決して勧めません。しかし必要性があって利用した場合は必ずレポートまたは論文内でその旨明記したうえで自分の責任で用いてください。
- 実在素材を扱う場合:実在の映像・写真・証言等を扱う作品でAIによる素材の編集を行った場合は、必ずその旨を明記してください。
- 作業効率化:デザインやエンターティンメントの分野では、作業の効率化ツールとしてAIを活用する実践が進められています。修了制作においても作業効率を高めるためのAI活用を認めますが、他のソフトウェアやデジタルツールの利用と同様に、利用の目的と方法を明確化して論文に記載してください。
2-3. 利用不可
- そのままの利用:AIが生成した画像、音声、文章などをそのまま自分の作品として提出すること(試験の不正行為に該当する可能性があります)。
- 未確認の資料利用:AIが示した資料を自分で確認せずに用いること。
- 機密情報の提供:個人情報や所属機関内部の情報をAIに提供すること。
- 肖像権侵害:実在する個人の画像を本人の同意なく素材としてAIに提供すること。
- 著作権侵害:既存の作品や研究と同一・類似し、著作権侵害など法令上の問題が生じる可能性があるため、既存作品・既存研究に酷似した出力を意図的に生成させることは行わないでください。なお、著作権ビジネス(IPビジネス): ロゴマークやキャラクターなど自社が保有する知的財産(IP)の使用権を貸し出し料金を受け取るビジネス(IPビジネス)が一般化しています。著作権侵害が厳しく糾弾される環境下では、AIを使って制作したコンテンツが他者の著作権を侵害したと判定された場合は相応のペナルティが課されることを念頭においてAIを利用してください。
3. AIを利用した成果物の評価観点
- 主体性と説明責任の評価:AIを使うかどうかではなく、 AIを思考や知覚を拡張する装置としてどう主体的に扱っているか、そしてその使用についてどのように説明責任を果たしているかを評価の一要素とします。